OBS Studioのノイズ除去機能は、配信や録画中の音声から背景ノイズ(扇風機の音、キーボードのクリック音、環境音など)を軽減または除去するための便利なツールです。以下に、OBSのノイズ除去機能の詳細、設定方法、使用時の注意点を説明します。
1. OBSのノイズ除去機能の概要
OBS Studioには、音声の品質を向上させるためのフィルターがいくつか用意されており、特に「ノイズ抑制」と「ノイズゲート」がノイズ除去に関連する主な機能です。これらはマイクやオーディオ入力から不要な音を除去し、クリアな音声をリスナーに届けるのに役立ちます。
- ノイズ抑制(Noise Suppression)
- 背景の持続的なノイズ(例:エアコンの音、PCファンの音)を軽減します。
- OBSでは、主に「RNNoise」と「Speex」の2つのアルゴリズムが利用可能です。
- RNNoise: AIベースのノイズ抑制技術で、人の声を学習してノイズを効果的に除去します。軽量で高品質な結果を得られるため、推奨されることが多いです。
- Speex: 従来型のノイズ抑制アルゴリズムで、RNNoiseほど高精度ではないが、軽量で低スペックPCでも動作します。
- ノイズゲート(Noise Gate)
- 一定の音量以下(閾値以下)の音をカットする機能です。マイクが拾う小さなノイズ(例:部屋の雑音)を完全に遮断するのに有効です。
- ただし、話し声が小さすぎるとカットされる可能性があるため、設定の調整が必要です。
2. ノイズ除去機能の設定方法
OBSでノイズ除去を設定するには、以下の手順を実行します:ステップ1: 音声ソースの選択
- OBS Studioを開き、「音声ミキサー」パネルでノイズ除去を適用したい音声ソース(例:マイク/オーディオ入力キャプチャ)を確認します。
- 音声ソースの右側にある「歯車アイコン」をクリックし、「フィルター」を選択します。
ステップ2: ノイズ抑制フィルターの追加
- フィルターウィンドウで「+」ボタンをクリックし、「ノイズ抑制」を選択。
- 名前を付けて(例:「RNNoiseフィルター」)「OK」をクリック。
- ノイズ抑制の方式を選択:
- RNNoise: 高精度で推奨。CPU使用率は低め。
- Speex: 軽量だが、効果はRNNoiseに劣る。
- 抑制レベル(Suppression Level):
- Speexの場合、-60dBから0dBの範囲で設定します(例:-30dBでバランスの取れた設定)。
- RNNoiseは自動調整されるため、細かい設定は不要です。
ステップ3: ノイズゲートの追加(必要に応じて)
- フィルターウィンドウで「+」ボタンをクリックし、「ノイズゲート」を選択。
- 以下の項目を設定:
- クローズ閾値(Close Threshold): 音声がこのレベル以下になるとカット(例:-50dB)。
- オープン閾値(Open Threshold): 音声がこのレベル以上でマイクが有効(例:-26dB)。
- アタックタイム(Attack Time): 音が検出されてからマイクが有効になるまでの時間(例:10ms)。
- ホールドタイム(Hold Time): 音が途切れた後もマイクを有効に保つ時間(例:200ms)。
- リリースタイム(Release Time): マイクがオフになるまでの時間(例:150ms)。
- 設定後、実際に声を出しながら調整し、話し声が途切れないように確認します。
ステップ4: テストと微調整
- OBSの「音声ミキサー」でリアルタイムに音声レベルを確認しながら、ノイズが適切に除去されているか、声が自然に聞こえるかをテストします。
- 背景ノイズが強い場合、ノイズ抑制とノイズゲートを組み合わせて使用すると効果的です。
3. NVIDIA Broadcastとの比較
NVIDIA Broadcastは、RTX GPUを活用したAIベースのノイズ除去機能を提供しており、OBSのRNNoiseよりも高精度で強力な場合があります。
こちらの記事も参考にしてみてください。
ちなみに私はNVIDIA Broadcastを使用しています。
以下は比較ポイントです。
- NVIDIA Broadcast:
- RTX GPUが必要(GeForce RTX 2060以上)。
- ノイズ除去の精度が高く、設定が簡単。
- 仮想マイクとしてOBSに統合可能(OBSの音声ソースでNVIDIA Broadcastのマイクを選択)。
- OBSのノイズ除去:
- GPU要件がなく、幅広いPCで利用可能。
- RNNoiseは無料かつ軽量で、十分な効果を発揮。
- 細かい調整が可能だが、NVIDIA Broadcastほどの自動最適化はない。
NVIDIA Broadcastを使用する場合、OBSのノイズ抑制フィルターをオフにして、NVIDIA Broadcastの仮想マイクを利用するのが一般的です。これにより、競合を防ぎ、GPUの負荷を最適化できます。
4. 注意点
- マイクの設定: ノイズ除去の効果を最大化するには、マイクを口元に近づける、ポップフィルターを使用する、部屋の反響を抑えるなどの物理的な対策も重要です。
- CPU/GPU負荷: RNNoiseは軽量ですが、複数のフィルターや高負荷の配信設定と組み合わせるとPCに負担がかかる場合があります。Speexは低スペックPC向けに適しています。
- 音声の歪み: ノイズ抑制を強くしすぎると、声が不自然になる(ロボット声や途切れ)可能性があるため、テストを繰り返して最適な設定を見つけてください。
- 他のソフトウェアとの競合: DiscordやWindowsのノイズキャンセリング機能が有効になっていると、OBSのノイズ除去と干渉する可能性があるため、それらを無効化することを検討してください。
- 最新バージョン: OBS Studioの最新バージョン(2025年7月時点では30.2以降)を推奨。バグ修正やパフォーマンス向上が含まれています。
5. 補足情報
- コミュニティのフィードバック: Xの投稿やフォーラムによると、RNNoiseは多くのユーザーにとって十分な性能を提供していますが、NVIDIA BroadcastやKrisp(サードパーティ製ノイズ除去ソフト)と比較して、極端なノイズ環境ではやや劣る場合があるとの意見もあります。
- トラブルシューティング: ノイズ除去が効かない場合、マイクの入力感度を調整(Windowsのサウンド設定で確認)、OBSの音声サンプルレートを48kHzに設定、またはフィルターの順序を変更(例:ノイズゲート→ノイズ抑制)してみてください。
詳細な設定ガイドや最新情報は、OBS公式サイト(https://obsproject.com/)やOBSフォーラムを参照してください。
また、NVIDIA Broadcastを併用する場合は、システム要件も確認してみてください。
ここまでご覧いただきましてありがとうございました。