ブログに株価チャートを掲載する際、著作権法や関連する法律を遵守する必要があります。以下では、株価チャートをブログに掲載する方法と、著作権法に関する詳細な解説を法律家の視点で提供し、TradingViewの利用についても具体的に説明します。
1. 株価チャートの著作権に関する法的背景
日本の著作権法(昭和45年法律第48号)に基づき、株価チャートが著作物に該当するかどうかを判断する必要があります。著作権法第2条1項1号では、著作物を「思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するもの」と定義しています。
(1) 株価データ自体の著作権株価データ(例: 日付、始値、高値、安値、終値など)は、事実やデータの集合体であり、それ自体は「思想または感情」を表現するものではないため、通常は著作物に該当しません。したがって、株価データそのものを利用して自分でグラフを作成する場合、著作権侵害のリスクは低いです。
(2) 株価チャートの著作物性一方、株価データをもとに作成されたチャート(例: ローソク足チャート、折れ線グラフなど)は、デザインやレイアウト、配色、表示方法などに創作性が認められる場合、図形の著作物(著作権法第10条1項6号)として保護される可能性があります。 例えば、証券会社や金融情報サイト(Yahoo!ファイナンス、株探など)が提供するチャートは、独自のデザインや表示方法により創作性が認められ、著作権の対象となる場合があります。
具体的には、以下のような要素が創作性に影響します:
- デザイン性:チャートの配色、フォント、レイアウトなどに独自性があれば、著作物性が認められやすい。
- 表示方法:テクニカル指標や注釈の追加など、独自の工夫が施されている場合。
- 編集の独自性:単なるデータの視覚化を超えて、特定の意図や表現が込められている場合。
したがって、証券会社や金融情報サイトのチャートをスクリーンショットで取得し、ブログに無断で掲載することは、複製権(著作権法第21条)や公衆送信権(同第23条)の侵害となる可能性があります。 弁護士の見解でも、こうした行為は「グレーゾーン」であり、訴訟リスクを避けるため無断掲載は控えるべきとされています。
(3) 著作権侵害の例外:引用著作権法第32条では、公正な慣行に合致し、報道、批評、研究などの正当な目的で必要と認められる範囲で、著作物を「引用」することが認められています。ただし、引用には以下の条件を満たす必要があります:
- 出典の明示:引用元(例: 提供元の名称やURL)を明記する。
- 必要最小限:目的に必要な範囲でのみ使用する。
- 主従関係:引用部分が従であり、ブログのオリジナルコンテンツが主であること。
- 改変の禁止:チャートに線や注釈を加えるなどの改変は、同一性保持権(著作権法第20条)を侵害する可能性がある。
しかし、株価チャートの引用は、批評や分析の目的であっても、チャート全体を掲載する場合は「必要最小限」を超えると判断されるリスクがあり、慎重な対応が必要です。(4) その他の法的リスク
- 金融商品取引法:株価チャートを掲載して特定の銘柄を推奨する内容をブログに記載する場合、投資助言業の登録が必要となる可能性があります(金融商品取引法第28条)。無登録での投資助言は違法です。
- 不法行為:たとえ著作権侵害に該当しなくても、許可なく他社のチャートを掲載することは、利用規約違反や不法行為(民法第709条)として損害賠償責任を負う可能性があります。
2. TradingViewを利用した株価チャートの掲載
TradingViewは、株価チャートをブログに掲載する際の最適な選択肢の一つです。その理由は、TradingViewの利用規約がチャートの使用を明示的に許可している点にあります。以下に、TradingViewを利用する際の具体的な方法と注意点を解説します。(1) TradingViewの利用規約TradingViewの公式利用規約()では、以下の条件を満たす場合、チャートのスナップショットやウィジェットの使用が許可されています:
- 帰属表示:チャートに「TradingView提供」または「Powered by TradingView」などの帰属表示を明確に記載する。
- 使用目的:ブログ、記事、書籍、教育セッション、ニュース、分析などで使用可能。
- 改変の禁止:チャート画像に線や注釈を加えるなどの改変は、同一性保持権侵害のリスクがあるため避けるべき(規約では明示されていませんが、著作権法の観点から推奨されない)。
具体的には、以下のような文言をチャート画像やウィジェット付近に記載することが求められます:
- 「このチャートはTradingView提供です」
- 「TradingViewのチャートを使用(https://jp.tradingview.com)」
(2) TradingViewを利用したチャート掲載の手順
TradingViewを使ってブログに株価チャートを掲載する方法は主に2つあります:画像としての掲載とウィジェット埋め込みです。
① 画像としての掲載
- TradingViewでチャートを作成:
- TradingViewのウェブサイト(https://jp.tradingview.com)またはアプリにアクセス。
- 希望する銘柄(例: AAPL、7203.Tなど)を検索し、チャートを表示。
- テクニカル指標や描画ツールでカスタマイズ可能(無料プランでは制限あり)。
- スナップショットの取得:
- チャート画面右上のカメラアイコンをクリックし、スナップショットを保存。
- スナップショットには自動的にTradingViewのロゴや帰属表示が含まれる。
- ブログへの掲載:
- 取得した画像をブログにアップロード。
- 画像の下に「TradingView提供」などの帰属表示を明記。
- 注意点:
- 無料プランでは広告が表示される場合や、機能に制限がある(例: チャート1枚のみ表示)。
- 画像を加工(トリミング、注釈追加など)すると、著作権法第20条(同一性保持権)の侵害となる可能性があるため、元の状態で使用する。
② ウィジェットとしての埋め込み
- ウィジェットの選択:
- TradingViewのウィジェットページ(https://jp.tradingview.com/widget/)にアクセス。
- 「リアルタイムチャートウィジェット」「テクニカル分析ウィジェット」「マーケット概要ウィジェット」から選択。
- カスタマイズとコード取得:
- 銘柄、時間軸、サイズ、色などをカスタマイズ。
- 生成されたHTMLコード(iframeコード)をコピー。
- ブログへの埋め込み:
- WordPressの場合、「カスタムHTML」ブロックやクラシックエディターの「テキスト」モードにコードを貼り付け。
- 他のブログプラットフォームでも、HTMLコードを挿入可能なエリアに貼り付け。
- 注意点:
- ウィジェットはリアルタイムで更新されるため、読者に最新情報を提供可能。
- コードを貼り付ける際、TradingViewの帰属表示が自動的に含まれるため、別途明記する必要はない場合が多いが、確認を推奨。
(3) TradingViewの利点
- 著作権の明確な許可:TradingViewは利用規約でチャートの使用を明示的に許可しており、著作権侵害のリスクが低い。
- 高機能なツール:テクニカル分析、複数銘柄の比較、リアルタイムデータなど、投資家にとって有用な機能が豊富。
- 無料プランでも利用可能:無料プランで基本的なチャート作成やウィジェット埋め込みが可能(制限あり)。
- グローバル対応:日本株、米国株、為替、暗号資産など多様な金融商品に対応。
(4) TradingView利用時の注意点
- 無料プランの制限:無料プランではチャート1枚のみ表示、広告表示、20分程度のデータ遅延などがある。リアルタイムデータを希望する場合は有料プランを検討。
- 帰属表示の徹底:規約違反を避けるため、帰属表示を必ず記載する。
- 改変の禁止:チャート画像に注釈や加工を施すと、著作権法違反となる可能性がある。
- 商用利用:ブログが広告収入や有料コンテンツを提供する場合、TradingViewの有料プランが必要な場合がある。利用規約を確認する
3. 他の選択肢と注意点
TradingView以外で株価チャートを掲載する方法も検討できますが、著作権リスクに注意が必要です。(1) 自分でチャートを作成
- 方法:株価データを取得(例: 株式投資メモ、Yahoo!ファイナンスのCSVデータ)し、ExcelやGoogleスプレッドシートでローソク足チャートを作成。
- メリット:自分で作成したチャートは著作権を自分で保有するため、自由に掲載可能。
- デメリット:データ取得やグラフ作成に手間がかかる。出来高や移動平均線などの高度な分析は困難。
(2) 株ドラゴンの利用
- 概要:株ドラゴン(https://www.kabudragon.com)は、株価チャートのブログ掲載を明示的に許可しているサービス。[](https://ringo-investrade.com/tyosakuken-blog-sns/)[](https://korekabu.com/chart-cite/)
- 利用方法:チャートをスクリーンショットで取得し、ブログに掲載。株ドラゴンのロゴが含まれるため、帰属表示を維持。
- 注意点:加工は推奨されない。利用規約を確認する。
(3) 証券会社や金融情報サイトのチャート
- リスク:Yahoo!ファイナンス、楽天証券、SBI証券などのチャートは、利用規約で転載や複製を禁止している場合が多い(例: Yahoo!ファイナンスは「私的利用を除く転載・複製禁止」)。無断掲載は著作権侵害や利用規約違反となる。
- 回避策:証券会社が提供するAPIやウィジェットを利用し、規約に従って掲載する(ただし、提供されていない場合が多い)。
(4) 日経平均株価など特定の指数
- 注意点:日経平均株価や日経平均VIなどは、日本経済新聞社が著作権を保有しており、無断転載は禁止。利用には許諾契約が必要。
- 解決策:TradingViewで日経平均(例: JP225)のチャートを利用し、規約に従って帰属表示を行う。
4. アドバイス
- リスク回避の優先:証券会社や金融情報サイトのチャートを無断で掲載することは、たとえ訴訟に至らなくてもグレーゾーンであり、長期的なブログ運営にはリスクを伴う。TradingViewや株ドラゴンなど、利用が明示的に許可されているサービスを使用する。
- 規約の確認:使用するサービスの利用規約を必ず確認し、帰属表示や使用条件を遵守する。
- 引用の慎重な運用:引用として掲載する場合でも、必要最小限の範囲にとどめ、出典を明記する。チャート全体の掲載は引用の範囲を超える可能性が高い。
- 金融商品取引法の遵守:銘柄推奨や投資助言を行う場合、投資助言業の登録が必要。個人ブログでも、内容によっては当局の監視対象となる。
- 加工の禁止:チャートに注釈や線を加える行為は、著作権法第20条の同一性保持権を侵害する可能性があるため避ける。
- 記録の保存:掲載したチャートの出典や許可の根拠(規約のスクリーンショットなど)を保存し、トラブル発生時に備える。
5. 具体例
TradingViewを使ったブログ掲載例以下は、WordPressブログにTradingViewのチャートを掲載する例です。
- TradingViewで「7203.T(トヨタ自動車)」のチャートを表示。
- スナップショットを取得し、WordPressのメディアライブラリにアップロード。
- 記事に以下のように記載:
トヨタ自動車(7203.T)の株価推移を以下に示します。 [チャート画像] チャート提供:TradingView(https://jp.tradingview.com)
- または、ウィジェットコードを「カスタムHTML」ブロックに貼り付け:html
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6. 結論
ブログに株価チャートを掲載する際、著作権法や金融商品取引法を遵守することが重要です。TradingViewは、利用規約でチャートのブログ掲載を明示的に許可しており、帰属表示を適切に行えば著作権侵害のリスクを回避できます。具体的には、スナップショットまたはウィジェットを利用し、「TradingView提供」と明記する形で掲載するのが安全かつ簡単です。
他の選択肢(自作チャート、株ドラゴンなど)も検討可能ですが、証券会社や金融情報サイトのチャートは無断掲載がグレーゾーンであるため避けるべきです。 ブログ運営を長期的に安全に行うため、利用規約の確認と帰属表示の徹底を心がけないとですね。
ここまでご覧いただきましてありがとうございました。